川柳が好きだから俳句を読んでいる(5、前原東作のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
う。それほど率直に宇宙である。

 月の稚児みなうそつきでありにけり

 とはいえ作者の作品が、その主題が、宇宙にまみれているわけでもなんでもない。これは明らかに比喩的な宇宙である、しかるに比喩的ではない貼り方をされている、これを作品が宇宙的であり、もしくは平面的に広いのであり、そしてあっけらかんと率直なのだと捉えたい、捉え過ぎだとは思うが。平面的に広いというのは先程も書いたとおり抄出の抜粋が多いとはいえ作者十五歳の作品から筆を絶つ直前の作品まで網羅しているからである、上記の一句はその十代の頃に読まれたもの。ほんのりと詩情をたたえつつも、美しく整った若々しさにみなぎったいい作品だ。


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