無名の歌/岡部淳太郎
人の生活から
人の生の行路から
ゆるやかに閉め出され
君は忘れ去られるだろう
君の名前も
君のいた日々も
それらの人びとにとっては
思い出せない
君は無名の不在
数多くの死者の中の
ほんのひとにぎりの中のひとり
君はひとり
やがて忘れ去られる者として
いってしまった
無明の里へ
思い出せない
名前を失くした
ひとりとして
ひとりとして
君のことを知る者がいない未来
その世界へと君は旅立ってしまった
ひとり
ただのひとりとして
歌いながら
やがてみんなも
君の後をゆっくりと追ってゆくのだが
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