その日は桜の花が咲いていた/岡部淳太郎
 
たらどうだろう? それを見て、あなたはあなたが向こう側に渡っていった日のことを思い出すだろうか。そういえばあの日は桜の花が咲いていたと、しみじみ思うことがあるだろうか。僕は思い出す。毎年、こうして否応なしに思い出してしまう。その日は桜の花が咲いていて、その日を境にあなたも、そして遺された僕たちも、二度と戻れない変化を潜りぬけたのだということを、僕は毎年変らずに思い出すんだ。その日は桜の花が咲いていて、あなたが死んでしまったのだということを。



(二〇〇九年三月二十六日・妹の六回忌に)

   グループ"3月26日"
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