砂になるまで/
岡部淳太郎
私の石はいま
眠っている
眠りながらも
あなたに関する記憶を育て
あの日と それにつづく日々を
絶対性のなかに閉じこめている
それほどに強い
あの日の記憶
どんな時間が私の上を
通りすぎても
どんな新しいものが
古い地層を覆おうとしても
石は眠りながらも
在りつづけ
時おり ふいに目醒める
それは風の乾きと
水の湿りに
幾度もさらされ
石がほどけて
砂になるまで
(二〇一三年三月)
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