三月の子守唄/岡部淳太郎
眠れ
いまを
盛んに
眠れ
もう
この時間
では
目醒め
ない
あなたよ
つぎの
時間で
目醒める
まで
ふたたび
嬰児の
泣き声を
漏らすまで
眠れ
眠れ
遠くまで
眠れ
あなたを失ってから、とても多くの時が過ぎ
た。だが、それはいま思い返してみると一瞬
の、鳥の旋回のような素早さであり、その中
で、はらはらと、あくまでもはらはらと、時
が落ちては消えて、溶けこんでいった。瞬間
の遅刻の、子供たちが、駈けまわる。彼等は
この世の中にこんな種類の悲し
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