三月の子守唄/岡部淳太郎
 
悲しみがあること
    など、知る由もない。あたたかさは人を陽気
    にさせるが、そのかたわらで私は、一瞬のよ
    うな時間の総量を思い返しては、それをまた
    しまいこむ。せめてこのあたたかさの、春よ、


桜の花よ
 咲け
 咲け
それから
 散れ
 散れ

 眠る
あなたに
 降り
つもって
つぎの
 夢を
ゆっくりと
まねき
寄せるまで

その中で
 眠れ
 花の
ように
つぎの
 時を
 夢に
 思い
描いて
 眠れ

思い出の
来世に
微笑んで

 眠れ
 眠れ
あなたよ
 眠れ



(二〇一四年三月)
  グループ"3月26日"
   Point(9)