ひなげし/はるな
先で消してどこかへ行ってしまう。
午前二時四十五分の食堂、錆だらけの包丁を花瓶に生けている料理人に俺は尋ねる「俺は誰だ」まっさらな前掛けをした料理人は湿った言葉を吐く「今日は火曜日だからね、帰ったらセックスをする日だ。女房は排卵日だから快く迎えてくれるだろうし、水曜日は定休だからね、刃を研ぐ必要もない。何かを急いでする必要はどこにもないんだ。できれば暖簾を下ろすのを手伝ってくれるかい?」俺は気をよくして薄汚れた暖簾を焼き払ってやった、油の染みた薄い暖簾はよく燃えた、料理人はひどく喜んで鯖を一匹寄越してくれたがそれも腐っている、突き帰すと礼を言いながら料理人は行ってしまう。
ごみだらけの海岸、身
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