no-title/士狼(銀)
り先に死ぬことほど、親不孝なことはないのと俯く
でも、
俺にはあなたたちの死を見送れるだけの
勇気なんてないんだ
隣のお姉さんの死は甘受できたとしてもね
知らなくていいよ
俺がどんだけ家族が好きかなんて
俺は弱い
そして醜い
さらに卑怯だ
人間が嫌いだと言いながら
人肌が恋しいとぼやくんだから
俺、将来アフリカで暮らそうと思ってるんだ
そんで、村役場で働くマサイ族の友達とか出来たりしてさ
四十歳ぐらいで多分死ぬと思う
兼好法師もそれぐらいが見苦しくないって言うし
らいおんに喰われて死ぬのが、
そこそこひどい俺にはぴったりだと思う
だけどあなたたちは知らなくていい
『恋愛寫眞』にあったみたいに、手紙を書き溜めておくから
きっと友達に頼んで毎月送ってもらうよ
『千の風になって』を書き写して
俺はあなたに出来る限り報いる努力をしよう
母の日にはいつもみたいに
真っ赤なカーネーションを送るから
またリボンだけでも、桐の箪笥に入れといてよ
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