胎/草野春心
 



  果物ナイフできみの
  胎のあたりをちょっと切ったら
  どろどろとした詩がこぼれてきた
  その飴色の液体は
  ぼくの手のうえを這い
  フローリングに落ちて広がった



  気づいてさえいなかったのか
  きみの顔には
  梅干のような笑みが張り付いたままで
  ぼくはそのまま柄に力を加え
  きみを殺してしまおうかと思った





   グループ"短詩集"
   Point(2)