秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
 
。私は食事する姿を人に見られたくないから一人にしてくれと表情や素振りで伝えた。トレーを取って、豆腐、野菜サラダ、みそ汁、小ごはんを載せた。260円を払い、豆腐に醤油を、サラダに青じそドレッシングをかけ、いそいそとお茶を入れ、なるべく人気の少ない寂しい場所を選んだ。まもなく彼がやってきて私の目の前の席に座った。
 「来るな!」と思ったが豆腐を箸で割る。
 「秋山さんいつも一人で食べてますね」
 「うん」
 それっきり会話が途絶えた。大体、こうなる。私は会話の仕方をほとんど知らずに生きてきた。緊張して箸から何度も豆腐がこぼれおちる。彼の顔をのぞくと下唇をかんでいる。私に気を使っているようだ。
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