秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
秀だ。
「アレックス・ロビラの『グッド・ラック』を読みなさい。きっと面白いから」
「はい…そうします…」
おそらく私は彼以上に残念な気持ちだった。
4講時の授業を終えて雪を軽く蹴りながら裏門へ歩いていると森野くんに出逢ってしまった。私はもちろん動揺するのだが、彼のほうは無邪気に声をかけてくる。
「アレックスなんとかの『グッド・ラック』、大学の図書館にありました。ちょっと読んでみたけど面白そうです」
そうか、と私は微笑んだ。私と彼は一緒に歩いた。思えば、私はこれまで大学で笑ったことなどほとんどなかった。いつも下ばかり向いて何か考え込んでいるふりをしていた。彼は私の心の永久
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