秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
す」
「じゃあゆっくり話せますね」
他意はないのだろうがこういうセリフにいちいちときめき、心を揺り動かされるのだった。
「私、実は受験に失敗しちゃって…、一浪しているんです」
「そうですか」
「だからここの部分が、なんか…心に染みるんです」
彼女がさしたところは、優等生だった主人公ハンスが学校で落ちこぼれていくシーンだった。
ちょうど山鼠(やまねずみ)が蓄えた食物を食って生きているように、ハンスはこれまでに得た知識によってなおしばらく生命をつないでいた。それから苦しい欠乏が始まって、ときどき改めて勉強をやってみたが永続きせずまた効果もなく、それがとうてい望みのないこ
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