秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
いことを知って、自分でも笑いたいほどだった。今はもう無駄に自分を苦しめることはよしてしまって、モーゼの書の次にはホーマーを、クセノフォンの次には代数を放棄し、教師の間で自分の評判がだんだん下落していって、優から良へ、良から可へ、ついには零へとさがって行くのを冷然とながめていた。
私たちはしばらく長い沈黙を保っていたが、やがてどこからか悲しみが湧いてきた。そしてその悲しみは彼女のほうからやってきて、私の胸に流れ込んでいたのだった。
「秋山さん、ここの文章をどう思いますか?」
小説の中には優れた箇所とそうでもない箇所がある。彼女が細い指先で示した箇所は優れた箇所である。
「僕はここ
[次のページ]
次 グループ"秘密荘厳大学文学部"
編 削 Point(1)