秘密荘厳大学文学部/済谷川蛍
セの何の作品が好きですか?」
「そうですねー、ベタですけど、『車輪の下』が好きです。あと『郷愁』も」
「僕も『郷愁』読んだことありますよ」
「ほんとですか!?」
「全然覚えてないけど」
彼女はあどけなく笑った。人を笑わすなんて随分ひさしぶりであった。
「秋山さんは何が好きですか?」
「『車輪の下に』と、『デーミアン』かな」
「あ、『デーミアン』読んだことあります! ものすごく難しい作品ですよね」
あえて彼女に説明しなかったが、よく難解といわれるヘッセの作品は、神秘主義とマイノリティの文学であるから一般的な常識や思考、社会性のある状態ですくすくと育っている者には共
[次のページ]
次 グループ"秘密荘厳大学文学部"
編 削 Point(1)