【批評祭参加作品】ひろげた本のかたち(佐藤みさ子)/古月
疑わしくなるような、自分に属する全てのものをぐらぐらと揺さぶる、それが佐藤みさ子の川柳だ。
そしてそれは、彼女にとっての彼女自身が恐らくとても不確かで不安定なことに起因するのではないかと、わたしは考えている。
たとえば、彼女の句から、顔にまつわるものをいくつか選んでみる。
・どの貌が人間なのか当てなさい
・顔の無い人がつくった夕食です
・顔半分もらう半分消してから
・顔洗い続けていくと骨残る
・「顔無し」と「顔無し」見つめあう電車
・「いないいないばあ」をしていて怖くなる
ここには空白のイメージがある。顔は言うまでもなく人間の人格や社会性と
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