批評祭参加作品■時が終る、詩が始まる/岡部淳太郎
面が出てきて、その後の語り手の心理描写を読むと妹が亡くなった後のことが思い出された。悲しさとか淋しさとかいった感情よりも先に、まるで現実ではないような不思議な感覚が訪れる。それはひとりの身近な者の死という事実によって惹き起こされるものだが、それは同時にそれを体験した者の心が変ってしまうことの表われであり、古い時から新しい時へと移りゆく過程に起こる現象なのだろう。いま、妹が亡くなった時とそれから数ヶ月間のことを思い出す。それは私にとって、もっとも大きな「揺らぎの時」であった。それを境に、私の詩はまったくといっていいほど変ってしまった。いや、それ以上に、私の生そのものが本質的な変化を遂げてしまったのだ
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