批評祭参加作品■吉野弘氏への手紙/服部 剛
た
その美しい心は、無情なこの世の片隅にそっと咲く一輪
の花のようです。
娘が席を立ち、立っていたとしよりが腰をおろす、そ
のひと時の間に「人としてかけがえのない 何か 」があ
るのを感じます。二人目のとしよりに席をゆずった娘も、
三人目のとしよりには席をゆずれなかったという人の心
の弱さにまなざしを注ぎ、うつむく娘に(可哀想に)と
語りかけるところに、この名詩の本質があるのでしょう。
そして、電車を降りた僕が駅のホームに立ち、美しい夕
焼け空をみつめながら、三人目のとしよりに席をゆずら
ず、(下唇をキュッと噛んで身体をこわばらせた娘)に
想いを馳せ、(やさしい心の持主
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