眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
ばかりが心に残るのだ。それにしてもなんという美しい筆跡だろう。冒頭の手稿写真のページと、それに続く編集された活字のページが語りかけてくる情報量(なんて言葉を使いたくないけれど)の差はとんでもなく大きい。たとえば、手稿の左端にはたいてい、日付が斜めに傾いて書かれている。それがまるで詩ではなく日記か、スケッチであるかのように。この詩の題名のように思われるラテン語” Ave Regina Caelorum”は、「聖母マリアに捧げる聖歌。ラテン語で『幸いなるかな天の女王』の意味。」という意味だと編集者注がつけられており、手稿をみると、この題名のようなものは、行頭から六文字ほど下げられた場所から書きはじめら
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