眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
 
かりの

桃の実の
かほりを。

あたまには
しろと
黄金(きん)との
すひかづらの
花冠(かむり)を。


この詩については、手稿の写真が詩集の冒頭に載っていて、それをみていると、「桃」の字の右側に消し跡が見える。おそらく手稿は鉛筆で書かれたものだと思う。消された漢字は「桃」ではなく、草冠のようなものが見える。面白いのは、須賀がその少し残った消し跡のうえから桃という字を始めず、まるで息を改めるように、一行開けて第二連を初めていることだ。これはほんとうに第二連なのだろうか。前半五行と後半五行にきれいに現れているシンメトリーと脚韻から考えると、もしの
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