眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
点となるミラノのコルシア・デイ・セルヴィ書店にたどり着く前、二十九歳から三十歳にかけて、ただ漂流していた時期に、あなた自身のために書かれたこれらを、おそらくあなたは、誰にも見せなかったのではないかと思う。私信やメモ以上に、公表されるのは歯痒かったのではないかと思う。上記に引用したすべての厳しい批評眼がここへ跳ね返ってくる。もし公表するなら、改稿したかっただろう、いやむしろ、神とあなたとの間だけの内面の秘密を、文学として公表すること自体が、あなたの文学に対する厳しい姿勢に反する。だから、少なくとも「詩作品」として公表されたくなかったのではないだろうか。そう思いながらも、あなたという人生が作品だと思う
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