眉のあたりにすずしさの残る少女みたいに/須賀敦子とその「詩集」について/渡邉建志
たり、社会につながらない、内側にこもった家元みたいなことになったりしている。
これだけたくさんあなたの文章を引用したうえで(最近の日本の言葉では「これだけハードルを上げたうえで」というらしい)、あなたの「詩集」が私の目の前にある。あなたの批評眼を通り抜けて発表されたのではない、手元にこっそり残された、詩が。あなたはひょっとしたらこれらを、分かち書きであるという理由だけで詩と呼ばれることを拒否したかもしれないのに。それは、真っ直ぐに、人生の悩みと信仰についての告白だった。
あなたがまだ人生に悩んでいたローマ留学時代、大学にも属さず、まだ夫となるペッピーノにも会っておらず、あなたの人生の出発地点と
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