■批評祭参加作品■日本の詩における韻律の歴史/岡部淳太郎
 
い記憶を
われわれは毒殺した

一篇の詩を生むためには、
われわれはいとしいものを殺さなけれぱならない
これは死者を甦らせるただひとつの道であリ、
われわれはその道を行かなければならない

(田村隆一「四千の日と夜」全行)

 これも萩原朔太郎の前出の詩と同じ〈A・B・A〉のサンドイッチ形式だが、この詩の場合は真中のBパートの比重が高く、萩原朔太郎の詩と比べると明らかに長くなっている。それがそのままこの詩の長さに直結しているのだが、「見よ」「聴け」「記憶せよ」という命令形をそれぞれの連の冒頭に配置し、さらにその後につづく行も「一羽の小鳥のふるえる舌がほ
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   グループ"第2回批評祭参加作品"
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