詩想 ?7/黒乃 桜
途端、あ、と声を上げて立ち上がる。
この部屋は、何年か前まで両親が使っていた物だった。
3人で住むには狭いアパートだったが、今は一人だから丁度良い。
両親は、どこにいったのか知らない。
「あーあったあった・・」
押し入れの奥の方から、色あせた水色のプラスチックの細長いケースを取り出す。
誇り被っているのを適当に手で払って、紙袋の横に置く。
ケースの蓋を開けると、黒と白のプラスチックの黒鍵が並んだ安っぽい鍵盤ハーモニカがきちっと収まっていた。
由夜が小学生の時につかっていた物で、白の鍵盤は多少黄ばんでいる。
まだ棄てて無くて良かった、と思いつつ昔変な音が出るといって曲げ伸ば
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