漂着 (連作8)/光冨郁也
が現れ、そこでマーメイドが出没するという。タレントの驚いた顔。フロに入ると、窓から海が見える。波の音を聞く。
天井を眺めていた夜、薬を飲まなくても、いつしか眠っていた。
朝、霧の中、ペットボトルを持って、島のまわりを歩き回った。さまよって、海岸を歩く。ぼんやりと岩の上で海を眺めた。
わたしは服を着たまま、ひとりで海に入っていく。漂いたかった。手を拡げ、しばらく浮かんでいたが、潮に流される。ペットボトルもどこかへいってしまった。もう必要ない。水を吸い、ジーパンが重い。体も冷えてきて、自由がきかない。わたしはじきに沈んでいってしまう。
海の底では時間が滞っているのだろう。沈んで
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