バード (「バード連作集1」)/光冨郁也
 
。片方の翼を痛め曲げている。
「ハーピーか」と、わたしの声に女は鳴く。
 それは、ひとの食事を邪魔するだけの存在だが、わたしは後ろのシートから、乾いたパンを出し、カップの牛乳に浸し、与える。女は笑うような目で、わたしを見上げる。わたしの股の上で、喉を動かす。次第に、激しく、水分をふくんだパンを、くらう。髪は赤茶で、ウェーブがかかる、その線にわたしは触れる。女の体は重い。

 わたしは、女と車を走らせる。風が、女を喜ばせる。笑い声がする。ただ走っているだけなのに、うれしいらしい。海が眼下に広がる。崖/ブレーキ踏む。ハンドルを静かに回す。鍵のアクセサリーの翼を、女は唇でつつく。わたしを見ては、
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  グループ"散文詩「バード連作集1・2・3」"
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