遺書(2)/虹村 凌
の部屋へと帰る道を歩いた。
カーテンで閉ざされた暗い部屋に戻ってくると、少しは気分が落ち着く。だが、急がねばなるまい。俺には残された時間が少ないのだ。
「30代以上の人間を信じるな、Do not trust over the thirty」この格言通りであれば、あと五年と半年で、世界の真理が手に入る。既に手中に収めている事も、無きにしも非ずだが、それはあまりにも、自分自身を高く評価し過ぎだろう。
別段、その世界の真理を手に入れたいが為に生きている訳ではない。しかし、手に入るのなら、手に入れてみたい。ただ生きていれば手に入るものでもなかろうし、もし手に入れたとしても、それは俺だ
[次のページ]
前 次 グループ"遺書"
編 削 Point(0)