遺書(3)/虹村 凌
挙句、死ぬ方を選んでしまいそうだが…。
俺は手に取った、下書き段階の遺書を眺めながら、そんな事を考えていた。ホープを取り出し、口に咥えて、再び遺書に目を落とす。この下書きも、下書きの下書きを元に作ったものだし、その下書きの下書きは更にその下書きから書き、その下書きは下書きとも呼べぬメモの様なものから作成されたのである。どうしてそこまで遺書を書きたいのだろうか、と自分でも不思議に思う。おそらく、最後まで格好をつけたいのだろう、と思う。何時死んでも格好がつくように、遺書を書き上げ、この恥と屈辱の多い人生を多少なりとも格好良く演出したいのだろう、と言う結論に至った。既に格好のついていない人生なのだ
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