面接(10)/虹村 凌
は、しばらく様子を見たほうが良い、と言う結論に至り、俺はその沈黙をやり過ごす事にした。彼女は石段でピースをもみ消すと、ふぅっ、と短いため息をついた。それでも、俺は黙って耐える。下手に動くと、更に状況を悪化させる。彼女の振る舞いを、視界の端に捉え続ける。
「あの」
彼女は思い切ったように、短く、それでも力強さを感じる声で言った。
「はい」
「あの、見られてました」
「え?」
「フロアマネージャーに、駅で一緒にいたの、ばっちり見られてました」
「あ…」
「だから、もう、隠す必要ありませんね」
心なしか、彼女は嬉しそうに言っていた。
「そうですか」
「残念
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