面接(16)/虹村 凌
ラーの匂いがまとわりついて離れなかった。それが、嫌だとも思わなかった。
そろそろ夕暮れになろうか、と言う時になって、ドアの鍵を開ける音がした。
「ただいま」
「おかえり」
彼女は疲れた顔で部屋に入ってきた。
「どうだった?」
「うん、心配は無いって。骨折っただけで、後遺症とかも残らないって」
「そうか。良かったね」
「うん」
心配して泣いたのだろう、目蓋が真っ赤に腫れあがっていた。
「目、凄い腫れてるよ」
「うん」
彼女は小さく俯いて、荷物を下ろして、俺の隣に座った。フワリ、と彼女自身の香り、汗、病院などが入り混じった匂いがした。彼女は頭
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