面接(3)/虹村 凌
い。息が上手く出来ない。指の間から、セブンスターがすべり落ちた。
「涙、出てますよ」
「ばい゛…」
「鼻水も、出てます」
「あ゛い゛…」
「顔、ぐちゃぐちゃです」
「う゛ん゛…」
「よだれも、垂れてますよ」
「うぅ…」
「そんなに泣かないで下さい」
甘えたい、凄い勢いで甘えたい。しかし、彼女の服に鼻水と涙とヨダレが付く。しかし、生憎だが今日の俺はハンカチを持っていない。苦しい。息が出来ない。胸も苦しい。つっかえてた何かが、取れたんだけど、なんか苦しい。息って、どうやってするんだっけ?
ぐふっ、とむせ返ってから、彼女がハンカチを差し出している事に気付いた。
あ、と言う言葉が脳味噌の中にポツンと現れた。
「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛っ…」
その日、俺は、久し振りに、声を出して、泣いた。恥も外聞も無く、大きな声で、泣いた。
ずっと前から、俺は泣きたかったような、気がした。
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