面接(3)/虹村 凌
 
くりとした、とても不明確で、傍にあったような、ずっと望んでいたような、何となく、俺が考えている幸せと似たような、そんな気がする響きで、彼女は「幸せ」と言った。俺の鼓動が速度を上げた。
「幸せに、なりたくないですか?」
 顔を上げた。彼女がこちらを真っ直ぐに、見つめている。視界がガクガクと揺れる。
「…です」
「え?」
「幸せに、なりたい、です」
 自分でも情けない程に、小さなかすれた声で、俺は答えた。臨界点が近い。
「だったら、何で、幸せにならないんですか?」
 もう、いいのかも知れない。
「助けて下さい…」
「え?」
「俺、幸せに、なりたいです」

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