犬の名は全て一郎 (お暇な時にでも読んで下さい・・・)/ふるる
一郎から苺の籠を受け取ると、華子はすたすたと屋敷へ続く石畳を行ってしまった。
後に続いて屋敷に入ると、祖父が縁側に呼んだ。子犬が2匹、まとわりついて、手のひらを舐めている。
「香津子はどうだい。」
一郎の母のことである。
「相変わらずですよ。おじい様もお元気そうで。」
縁側の様子が以前と違うので見ると、縁側の横にしつらえた盆栽用の立派な棚に、何も載っていない。祖父が大切に育てていたものが沢山あったはずなのだが。
「盆栽はどうしました。」
「みんな一郎達にやられたわい。」
おかしそうに子犬の頭をぽんぽんたたきながら昌造はいった。
「僕のせいみたいに聞こえるじゃないですか。第
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