犬の名は全て一郎 (お暇な時にでも読んで下さい・・・)/ふるる
た。
「私にはよく分からないわ。美津子は昔から華ちゃんの好きなようにさせてきたからねえ。あなた、丁度よいわ。静岡のおばさまから苺が沢山来たから、あちらに行って、真偽の程を確かめてきて頂戴。」
美津子というのは、一郎の叔母、一郎の母の妹である。逆に母に頼まれてしまった。薫り高い苺のつまった籠をぶらさげて、一郎は華子の家の門をたたいた。
「どなた?」
門の向こうの声は、まさしく華子である。
「僕だよ。静岡から苺が来たから、持ってきた。」
「一郎ちゃんね。苺を持っているの?」
門の向こうでは、数匹の犬とおぼしき息づかいが聞こえてくる。
「持っている。」
「沢山?」
「沢山。」
「こ
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