犬の名は全て一郎 (お暇な時にでも読んで下さい・・・)/ふるる
遊ぶこともなくなった。
華子はすくすくとかわいらしく成長し、今や十六。一郎は十八だ。
桜の花もほころびかけるかといううららかな3月の日、一郎は華子のおかしな噂を耳にした。
「あの角のお屋敷の華子嬢は、犬を集めているらしい」
「集めているどころか、様々な芸をしこんでいるらしい」
「その芸は門外不出のものであるらしい」
「しかも、犬の名は全て一郎であるらしい」
犬を集めて芸をしこんでいるまではよかったが、その名が全て一郎というのは聞き捨てならない。
一郎は母に問いただしてみた。
「どういうことですか。華子ちゃんの犬の名が全て一郎というのは。」
おっとり屋の母は頬に手をあてて答えた。
[次のページ]
前 グループ"短いおはなし"
編 削 Point(10)