俳句の非ジョーシキ具体例5/佐々宝砂
たって、こんなふうに人を戦慄させることはできない。「青い空」だろうが「蒼い空」だろうが面白くない。「赤くて青くて黒い空」でもつまらん。つまらんことこのうえない。そこに「白い雲」があってもつまらんことはかわらん。だが、そうした単純な色彩表現の積み重ねが「戦死」と結びつくとき……
私は言葉に詰まってしまいそうになる。赤い。言うまでもなく血液だ。あるいは炎であるかもしれない。青い。おそらく打撲傷の青ずみだ。戦地で病んだため顔色が悪くなっているのかもしれない。黄色い。傷や火傷が膿んできて、もしかして蛆がわいている。そして黒い。もう想像するのがいやだ。私はいやだ。戦死は赤くて青くて黄いろくて黒い、ああ
[次のページ]
前 次 グループ"俳句の非ジョーシキ(トンデモ俳句入門)"
編 削 Point(10)