俳句の非ジョーシキ具体例5/佐々宝砂
ああそんな単純な表現だけで、私にはたくさんだ。もうたくさんだ。でも私は、きっと目を逸らしてはいけないのだ。この俳句の単純な表現のなかに数えられない死がある。ひとつの死ではない。たくさんの、ひとつひとつ意味がある、数えることのできない死だ。私はその死のひとつひとつを直視しなくてはならない。正しい情報を得ることができないならば、せめて自分の想像を直視する、赤くて青くて黄色くて黒い戦死を。そして戦慄する。何度も何度も。
あなたが白泉の戦争の句に戦慄しないのだとしたら、あなたが、非常識なのだ。
そして「戦争」こそは非常識の極みだ。人を殺し、物を壊す。個人ではとてもできない、恐ろしい権力が存在し
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