(無題)/キキ
物語を失ったとあなたがいい
足を組んだ瞬間に春色のスカートの裾が膝のうえまで捲くれ
気づくまでの17分間
『夜のシャボン玉をすべて打ち落とすには
鳩が3万羽必要よ、きっと
あなたが目を閉じると
耳までもふさいでしまったように
さみしかった一昨日の雨が傘を打つ音、濡れてゆく靴の先、その続きを思い出す
『象に出会った乳牛たちは
彼女らの母性を真似て集い子どもを背中に乗せて踊るわね、きっと
続きとは
バスタブにたっぷりお湯をため泡立てて
はじけていくノイズに満ちて
温かかったその晩も
やはりたったひとりで眠ったこと、明け方に見たむらさき色の夢のこと
それから
もう一晩眠ってようやく会えたあなたが
すべての音と色を忘れた気がしていたわたしの膝を笑い見失った物語を哀しんでいて不思議
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