01:ふたりぼっち/chick
ちばん嫌いなタイプの男だ。
「なーっ」
抗議のつもりでもう一声あげた。
このかわいらしくない声にも慣れたのだろう、広樹は動じることなく、いってきますもなく玄関から出て行った。
「鈍感」
ドアの閉まる音を聞いてか、タクミがまだ手の中に滑り込んできた。
土曜日の朝、私はこうやって二つの背中を見届ける。逃げる背中、帰る背中。逃げる背中の方がかわいらしくて、帰る背中の方がちょっと切ない。
何で好きになってしまったんだろう。
広樹が帰るまで準備できないでいるのは、こうやって泣くためなのだ。
タクミを抱きしめる。広樹とは違う、やわらかいからだ。
いちばん鈍感なのは、これから
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