ボスのブルース/佐野権太
 
朝起きるとボスだった
眉間に深い皺が刻まれていたが
特に不満があるわけではなかった

煙草をつまんで深々と吸い込む
ブラインドはない
のでカーテンから覗く
何ということのない休日の朝が広がっている
弥生町も龍神会も
すっかり平和になってしまった

ブランデーグラスに烏龍茶をついで
ちびちび飲んだ
誰かに突っ込んで欲しい衝動にかられて
妻の携帯にメールしてみる
(こちらボス、そっちはどうだ
寝室から冷たい波動が伝わってくる
(何でもいいけど、ゴミ出したのっ!

ボスでいたかった
ボスのはずだった
太陽に向かって
なにぃ
と小さくつぶやいてみる


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