お父さんスイッチ/佐野権太
二日遅れのホワイトデーの
白いリボンを髪にのせて
ふわりと回ってみせる君は
大きくなったら
メイドになりたい
という
人様に奉仕したいとは
見あげた心がけだ
と
解釈は準備しておこう
*
飛行船
と空をさす君の指先は
いつもまっすぐのびていて
気持ちがいい
風をつれて走る君の足元から
草原が生まれる
それを追い越さないように
僕は固いアスファルトを踏む
ときおり確かめる背中
の陽だまり
そういうものに
僕はなりたい
*
(お父さんすいっち、おん!
と君が叫ぶ
まぶたをとじて、呼吸を整える
だいじょうぶ
疲れていても
君を高々と掲げることくらい
できる
行こう
ころころ転がっても
岬のはなまで
*
いつかふたりで
海をみようぜ
肩車するかって聞いたら
小さく髪を揺らして
もう 大人だから って
つん としょっぱい
風にやられて
お父さん?
なんて覗き込むなよ
もう 子供みたいだから
おまえは
海、みてろよ
ずっと、海だけ
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