「モノポライズ」/長谷川智子
かれらはいつもどこかうつろでひんやりとした風を吹かせていた記憶がある
そして私もうつろな眼と心をしていたそうだ
その箱の外も薄暗くよるべのない灯りばかり
そこここに薄汚れすれっからした眼がうようよと辺りを徘徊する
擦るマッチも失くなるといよいよ寒さは増す
幼い私の中で何か黒く澱んだものがくすぶり始める
そして根本からそれを薄め透かす術を知ることもなく
3 花狂ひ
28年生きてきて
ひとりだけ
私のものにしたくなったひとがいた
かれもうつろな眼をしていた
名前のイニシャルは私のそれと同じもの
しかも私の実父のもそれ
最初はげんなりいまはしっくり
ただ
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