風のオマージュ その8/みつべえ
底に響いた(そんな気がする)。
「私は自分のことしか語れない」
そうして、これが私が石原吉郎の肉声として覚えている言葉のいっさいである。いま長年月をへて「石原吉郎全詩集(花神社)」のなかに「若い人よ」を見いだすとき、私の感慨はふかく切ない。「通過することが生きることの/はげしい保証」であった私の歳月! しかしその「爪先は」「私にはとどかないのだ」と詩人は書いていたのだ。私たち「若い人」へのメッセージとして。
この作品は1975年に「磁場」に発表された。
●石原吉郎(1915〜1977)
静岡県生まれ。敗戦時ソビエト軍に拘留されシベリアでの重労働25年の刑を宣告される。昭和28年スターリン死去にともなう特赦による帰国後、38歳から詩を書きはじめた。処女詩集「サンチョ・パンサの帰郷」の上梓は49歳のときであった。
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