風のオマージュ その10/みつべえ
 
一気に遡ってゆく種類の感覚をおぼえる。




真っ逆さまに
墜ちていった落日の
残照にひるがえる
かもめ

 すべてをゆるすことが
 愛であることのむなしさ

ひたすらに想いをこめて
追っていった
エメラルドの魚は
遠い水脈を遊泳している

 言葉はいつも
 真実を語るに足りない

あの日
陶酔して
見送った日没の
残照が
かもめの内部にひるがえる


  ※同詩集より「かもめ」




 あれからン十年たったいまも「墜ちていった落日の/残照にひるがえる/かもめ」という詩句が口をついて出る。脳細胞の活発なときに刻印されたせいだろう
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