今夜月明かりに虹を見る/rabbitfighter
 
迎えたのはさっきここにいなかった彼女だった。背が高く、痩せているせいでいっそう細長く見えて、白衣の肩には船員の証であるブルーのリボンが鮮やかで、外見と、そのゆっくりとした動きは、僕に深海の生き物を思わせた。今でも、彼女といると、僕はそんなことを思わずにいられない。光の届かない暗闇、鉄を押しつぶすほどの水圧、 それはそのまま彼女の纏っている世界で、彼女はそんな世界に生きている一匹の深海生物だ。
 一時間ほどのカウンセリングの途中、ドクターは彼女を看護士として紹介した。さっきから気になっているようだからと、ドクターはいたずらっぽい目をしながら言った。なるほど、彼は確かな心理分析眼を持っている。その時
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