今夜月明かりに虹を見る/rabbitfighter
僕は一瞬、書きかけのレポートに気持ちを向けたが、すぐにまた彼女の方に戻ってきた。寝息はかすかで、口は閉じたままでいる。僕の飲んでいる睡眠剤は、浅い眠りを飛ばして、いきなり深い眠りに落ち込んでしまう。一錠で約三時間、何錠飲んだかはわからないけど僕がデッキに行く前にはまだ起きていたので、少なくても後二時間は眠っているはずだし、少々のことでは起きないだろう。ブランケットをめくると、裸の彼女が横たわっている。その裸は、欲情を感じさせないほどやせ細り、鎖骨や肋骨がくっきりと浮き出ていた。食べることもままならず、夢にすら苛まれ、それでも静かに呼吸している、まるで月のように、熱を持たない、月光のように。
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