今夜月明かりに虹を見る/rabbitfighter
体の傷は癒えても、心の傷は癒えそうにない。
デッキに出る。潮風を浴びる。手を広げると微かな浮遊感を感じる。船団を組み、真っ白な帆を張り、未だ見ぬ神秘を目指し錨を揚げたのはいつの時代だったか。
独身者のためのシングルルームが並ぶ長い廊下には窓がない。アルファベットと数字が組み合わされたルームナンバー、のぞき窓、かもめの羽のような曲線を描くステンレススティールのドアノブ、あるドアにはリーフがかかり、別のドアには国旗がかかり、また別のドアにはロックアーティストのポスターが、アニメのキャラクターが、どこかの風景写真が、色鮮やかなオイルペインティングが。
ドントディスターブのサインが
[次のページ]
前 グループ"今夜月明かりに虹を見る"
編 削 Point(3)