白熱 リバース/佐々宝砂
とするのだ。
白い洞窟の白い石膏の壁に、
俺は俺の生命を残していこうとする、
なんのためにと問われても俺には答えられない、
俺はただそうしなくてはならない、
俺のなかの生命以外のものが命ずるのだ。
俺のなかの非人間的な白熱が命ずるのだ。
5.
いったいどこからきたというのか、
いったい誰が与えたというのか。
俺のなかのこの白熱。
俺は惑い悩む閑もなく洞窟に白熱する。
生む性に生まれながら生まない俺、
俺は俺が女の性を持つことを否定しない、
俺が俺と名乗るとしても、
それは男性性への仮託でない、
亜硫酸ガスに満たされた洞窟の、
冷酷な白熱に、
「私」という一人称はいかにも弱いのだ。
不在の憧れが不在であるとしても俺は憧れやまぬ。
蜘蛛よ!
おまえの毒ですら俺を殺さないらしいよ。
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