六角の箱庭/木屋 亞万
として夜の闇を照らした
どんなに寒い夜でもシーダを見ると温かい気持ちになれた
(それでもゴオゴオと怖い音はしていたけれど)
幼少期の思い出はいつもシーダが側にいた
私が小学校を卒業する半年くらい前
大きな台風が私の住む地域を直撃した
翌朝起きるとシーダは風に倒れていて
家の前の小さな道を塞いでいた
すぐにシーダは切られて処分されてしまった
人生最初の家族の死が庭の木だといえば
何も知らない人たちは笑うだろうが
私にとってシーダは家族であり、憧れの存在だった
何をすることもできず、ただ泣いている私に
祖父は一本の鉛筆をくれた
「シーダはね。この1本の鉛筆になったん
[次のページ]
前 次 グループ"象徴は雨"
編 削 Point(5)