六角の箱庭/木屋 亞万
小さいながら我が家の庭には
大きな松の木が植えられていた
初夏の頃には松ぼっくりをつけるその木は
祖父によるとヒマラヤスギという種類だそうで
松ぼっくりのできる杉ということが
当時の私にはとても魅力的に感じられた
狭い庭をでかい顔して占拠している様子を
毎朝学校に行く前に見上げていたのを覚えている
朝は爽やかで頼もしいシーダ(我が家ではその木をそう呼んでいた)も
夜になるとおどろおどろしい様子で
風が吹くたびにゴオゴオと音を轟かせた
幼い私は、夜の門番を恐れて夜更かしをせず
良い子として日々を過ごすことができた
クリスマスにはシーダに電飾をつけ
大きなツリーとし
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