夜光列車/木屋 亞万
に羽を擦らせている
そのなかに蛍はいないかもしれない
しばらく太陽を見ていない、それはまるで遠い昔の神話のようで
空には雲さえなく、月もいない、空の出演者たちは
舞台袖まで伸びている電線に紛れて、照明設備や音響設備に紛れている
「男の子にとって、兄の自転車の荷台は新幹線そのものでした
耳の横を、風の子どもたちが駆け足で過ぎ去る気配が楽しくて
男の子は、自分も自転車に乗りたいとよく思ったものでした
彼の兄は七つも年上で、ハンドルがカマキリの自転車を
かっこよく乗り回していました、その荷台は男の子の指定席でした
長い下り坂を直滑降、ノーブレーキで駆け抜けるのが、彼らの流儀でした
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